あの訃報から約3ヶ月が経ちます。日本人の美学を集約したような稀代の名優、高倉健さんは、最期までご自身のスタイルを貫き通して旅立たれました。
高倉さんは読書家で、特に山本周五郎の描く男たちの世界に強く共感されていたことは有名です。中でも『晩秋』という短編がお好きだったと聞きました。
藩の立て直しを図るために情け容赦ない政治を執った進藤主計(かずえ)は、君主が代替わりすると過去の悪政の裁きを受ける身となりました。審判が下るまでの間、主計の身の回りの世話をすることになった都留(つる)は、かつて主計が切腹を命じた家中の娘でした。
亡き父の遺志を果たすため懐剣を胸に主計の世話を続けていた都留はある日、主計と客人の会話を盗み聞きし、主計の真意を知ることになります。最初から覚悟の上で悪役となり、世間からどんなに恨まれようと藩政改革のためにたゆまず屈せず闘ってきたこと。
目的が叶った今、「進藤主計」を悪政の首謀者として裁くシナリオを描いているのは、ほかならぬ主計自身であること。切腹を命じたある家中に対して今でも堪えがたい無念の気持ちを抱いていること――。
物語の最後、主計は「自然の移り変わりの中でも、晩秋という季節のしずかな美しさはかくべつだな」と晩秋を称えます。都留はそれを聞きながら、すべてを自分の胸の内に秘めて人生の幕を引こうとする主計の人生に思いを馳せるのでした。
「想いの強さ」というものを考えたとき、言葉に出したり人に伝えたりすることが自分の活力になる場合があります。成功者の多くが「夢を語れ」と指南するのは、言葉のパワーが物事を動かすことを体験的に知っているからでしょう。
しかし、逆もまた真なりではないでしょうか。
つい自分を主張したくなるのが人間ですが、強い信念は胸に秘め、愚痴も言い訳もなしに課せられた使命を果たし、一切の責任を自分が負った進藤主計の気高さは、そのまま孤高の名優に重なります。改めて高倉健さんのご冥福をお祈り申し上げます。
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