「成功」の反対は何でしょう。
今では小学校でも使われるくらいよく知られた問い掛けです。
成功の反対は「失敗」ではなく「何もしないこと」、または「チャレンジしないこと」ではないでしょうか。
思うような結果が得られなかったとしても、それは成功の種まきだったというわけです。
では「最良」の反対は何でしょう。
辞書には「最良の反対は最悪」と書かれていますが、もちろん辞書的な意味を問い掛けているのではありません。
「最良の反対は良である」と言ったのは、主に自費診療を提供している歯科医のK氏でした。
保険という制度のある日本では、保険診療をしたほうがビジネスとしては楽かもしれません。
けれど本当に必要な歯科医療を提供しようと思ったら、保険制度の中で無償の部分を増やすか自費にするかの難しい選択だそうです。
K氏自身、以前は保険請求できない部分は修行だと思って辛抱し、患者の健康のためにそこそこ良い診療をしている自負はありました。
「まあまあなことはしているから、この程度でも他の歯医者よりは良いことをしているはずだ」。
そうやって自分を鼓舞する反面、常に頭から離れないのは「これはベストな診療なのだろうか」という迷いでした。
そんな葛藤の日々の中でK氏が出会ったのが、先輩歯科医であるY氏の「最良の反対は良である」という言葉だったそうです。
「そこそこ良い」は「ベストを尽くすこと」を妨げる。
「まあまあ良いことをしているから」という思いでいると、その先の一歩、さらにもう一歩がなかなか出ない。
Y氏の言葉にK氏は背中を押されたと言います。
「そこそこやっているけれどベストではないことは分かっている。分かっていながらも現実に負けてきた自分と向き合うときが来たのかもしれない」と。
誰もが上を目指す必要はありません。
ただ、自分なりのベストを追い求める商売ができたら、きっと良い人生になるだろうなと想像します。