優れた経営者の中には、ひそかに茶道の心得のある人が少なくないと聞きます。
400年以上も続く究極のおもてなしの心として世界にも知られている茶道。
その本質は、亭主(主催する人)が一期一会の精神で正客をおもてなしすることです。
茶道の世界観に経営者としての道を求めるのは、ごく自然なことかもしれません。
茶道の創始者ともいえる千利休が説いた茶道の在り方に「利休七則」があります。
一則、茶は服のよきように点(た)て(相手の状況や気持ちを考えながら心を込めて茶を点て)
二則、炭は湯のわくように置き(的確に誠実に準備を行い)
三則、夏は涼しく冬は暖かに(相手が心地良いと感じるようにもてなし)
四則、花は野にあるように(本質を見極め)
五則、刻限は早めに(心にゆとりを持ち)
六則、降らずとも雨の用意(万全に備え)
七則、相客に心せよ(お互いを尊重しあう)つまり利休七則とは人をもてなすときの心得です。
今さらと思った人もいるでしょうか。
まさにそんな逸話があります。
ある日、弟子が茶の湯の極意を求めてきたので、千利休はこの七則で答えたそうです。
すると弟子は「それくらいのことなら私もよく知っています」と言ったそうですが、それに対して千利休は「七則ができるなら、私はあなたの弟子になりましょう」と返したそうです。
日本人は古来より「和の心」を大切にしてきました。
けれど「相手のため」や「尊重しあう」といったことは、ただ自分を相手に合わせていればいいというものではありません。
例えば、炊きたての白いご飯、おみそ汁、お漬け物の組み合わせはシンプルにしてある意味、最高のごちそうです。
とはいえ、この3つを全て混ぜてしまったら、それぞれの味も組み合わせのバランスも台無しです。
ご飯はお茶わんに、おみそ汁はおわんに、お漬け物は小鉢に入れて、それぞれの器がひとつのお膳に収まってこその「ごちそう」です。大上段に構えなくても、身の回りに今すぐできる小さなことはありませんか。
商売は「シンプルなごちそう」でありたいものですね。