NHKの人気番組のひとつに『プロフェッショナル 仕事の流儀』があります。
さまざまな分野で活躍する人たちに密着しながら「あなたにとってのプロフェッショナルとは?」という質問で番組は山場を迎えます。
答えはもちろん人ぞれぞれですが、そこに一般論はありません。
誰もが自分の経験から導き出した自分なりの信念を持って仕事に取り組んでいることが伝わってくるシーンです。
若い頃から車が大好きだったというN氏は、アマチュアのレーシングドライバーとして運転の腕を磨いてきました。
65歳の今でも、愛車のGT-Rで峠を攻めるために筋トレを欠かしません。
体幹がぶれると動作が遅くなるからだそうです。
そんな彼に「プロドライバーとはどんな人ですか?」と聞いてみたことがあります。
N氏の答えは拍子抜けするほどシンプルなものでした。
「普通の運転がきちんとできる。それがプロドライバーです」。
もう少し詳しく聞くと、言わんとすることが理解できました。
「きちんと」とは「丁寧」ということ。
丁寧にブレーキを踏めば急ブレーキをかけなくて済む。
丁寧にハンドルを切れば急ハンドルを切らずに済む。
丁寧さは安心感であり、だから助手席の人は安心して乗っていられる。
つまりスピードが速くても、路面が悪くても、曲がりくねった道でも、どんな状況でも普通の運転がきちんとできることがプロドライバーであるということでした。
からくり人形師の九代目玉屋庄兵衛さんも『プロフェッショナル』に出演した際、「プロフェッショナルとは、与えられた仕事を丁寧に仕上げること」と答えていました。
商売がうまくいっている人からは「当たり前のことを当たり前にやっているだけ」と聞いたことがあります。
要するに、雑な仕事では話にならないということでしょう。
「丁寧」は簡単なようでいて、実は奥の深い流儀です。
内心に尊大な気持ちがあれば、目利きの人にはすぐに見破られてしまいます。
普通のことを丁寧に、当たり前のことを当たり前に。そんな商売をしていきたいものですね。