2014.06.15更新

 今では当たり前のように使われている「有言実行」という四字熟語。ご存知のように「言ったことは必ず実行する」という意味で、責任を問う場面などでよく耳にします。

 しかし、「有言実行」はもともとの言葉ではなく、「不言実行」から派生した造語のようなものだそうです。不言実行とは、文句や理屈を言わずに黙って「なすべきことをする」こと。

 かつて、奥ゆかしさや慎ましさをよしとした時代には、不言実行が美徳とされました。

 「古者の、言をこれ出ださざるは、躬(み)の逮(およ)ばざるを恥づればなり」とは孔子の『論語』の一節で、昔の賢者が軽々しく言葉を口にしなかったのは、自分の言葉に実行が追いつかないのを恥としたためであるといった意味でしょうか。

 つまり、自分で言ったことを実行できないのは恥だと考えていた孔子は、言葉には慎重であるようにと説いたのです。

 軽はずみな言動は恥どころか信用を失います。孔子の言うとおり言葉には慎重でありたいものですが、最近は有言実行の意味合いが「やろうとしていることを口に出す」に変わってきて、不言実行より立派な態度だと見なされる傾向があります。

 そのせいか、自分の思いや目標を口にしてアピールすることが、成功の秘訣だという風潮も感じられます。

 口ばかりの「有言不実行」に比べたら、約束事を口にして自ら退路を断ち、覚悟をもって行動することは大したものです。

 しかし、努力を人に言わず、その姿を見せもせず、人知れず淡々とひたむきに成果を出し、けれど自慢することもなく、それでもなお努力を続けることは、純粋に自分との勝負である分、口に出す以上に強い信念が問われるものです。

 気軽に言葉にしないで胸の内に秘めた思いが本物であれば、やがて成熟して実りの時を迎えるでしょう。

 そのときあなたの言葉にはさらに重みが増し、振り返ればそこには確かな足跡が刻まれていることだと思います。

投稿者: 伯税務会計事務所

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