【おなかが空けば、ごはんはおいしい】
2018.03.15更新
知人の家の裏庭に、ときどき野良猫の親子がやって来るそうです。
親猫はガリガリに痩せており、2匹の子猫はどちらも片目がつぶれていて、おそらく病気にかかっているとのこと。
知人は子猫を病院に連れて行こうか迷ったそうですが、一時期でも親猫から引き離すことが良いことなのかどうか考えた末に、黙って見守ることにしました。
雨の日には裏庭の物陰に3匹で寄り添い、晴れた日には陽当たりの良い場所でのんびり昼寝を楽しむ親猫の周りで、子猫たちがじゃれて遊び回っているとか。
その様子を見て知人は思ったそうです。
今の時代、野良猫として生きていくのも大変だろうに、親猫は親としての役目を淡々と果たし、子猫は明日のことなど知るよしもなく今に遊ぶ。どうやら小さな出来事に右往左往しているのは人間だけかもしれない・・・。
ロシアの作家チェーホフは、44歳で亡くなる5カ月前に、かつての恋人リージャ・アヴィーロヴァに手紙を送りました。
「ごきげんよう。なによりも、快活でいらっしゃるように。人生をあまり難しく考えてはいけません。おそらくほんとうはもっとずっと簡単なものなのでしょうから」。
チェーホフが言うように、人生は自分で考えているよりもずっとシンプルなのかもしれません。
そんなシンプルな人生をわざわざ複雑にしているのは、他でもない自分自身でしょう。
商売で成功する秘訣(ひけつ)、幸せになる方法、ちまたにあふれる色々なノウハウは人生を豊かにする手助けのように見えて、実は自分を余計に惑わせる足かせになっている場合もあります。
楽しい人生にしたければ、ノウハウを学ぶよりシンプルに生きればいいという、実に単純明快なメッセージをチェーホフは残してくれました。
役に立ちたい。面白そうだ。やってみたい。
純粋な動機で始めたことが、いつの間にか、おなか一杯なのに「おかわり!」と叫ぶようなことになっていませんか。何事も深刻になり過ぎるのはよくありません。
おなかが空けば、ごはんはおいしい。至ってシンプルな原理ですね。
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