【大満商売より小満商売】
2018.05.15更新
北海道では春の息吹を感じ、沖縄では初夏を迎える5月。日本全国いたるところで体中に力みなぎる季節になりました。
5月21日頃は二十四節気の「小満」(しょうまん)にあたります。
小満とは、万物に生気が充満し、果実が実り草木が繁るという意味で、自然界の全てのものが次第に満ちてくることから小満といわれます。
田畑からの収穫を生活の糧にしていた昔の人にとって、農作物の出来・不出来は死活問題でした。
5月の半ば過ぎは前の年の秋にまいた麦などに穂がつく頃。
無事に穂がつくと「今のところは順調だ。
よかった、よかった」とひと安心(少し満足)したことが小満の由来のひとつだともされています。
ところで、二十四節気には「小暑」に対する「大暑」があり、「小寒」に対する「大寒」があります。
しかし「小満」の対になる「大満」はありません。
小満が「ひと安心」なら、大満は「心配事が何もない満足しきった状態」とでもなるのでしょうか。
自然は慈母のようなやさしい面を持つ一方で、暴君のような怖さも、情け容赦のない厳しさもあります。
今よりずっと自然に寄り添って暮らしていた昔の人々は、自然の二面性を肌身でしっかり感じていたからこそ、暦に大満がないのかもしれないと勝手に想像してみました。
話を現代に移しましょう。
現代人の小満は「ひと安心の少し満足」ではなく「少々不満」になっているような気がします。
今のところは順調でもそれだけでは満足できず、先の先まで順調であろうとしたり不安になったり。
待つことを嫌い、結果を先に知りたがり、麦の穂が出るのは当たり前だと思って感謝を忘れてしまう。
私たちは知らず知らずのうちに大満を追い求めてきたのではないでしょうか。
これが仕事であれば日々、何の心配もなく十分満たされた「大満商売」は理想的かもしれません。
けれど何事も陰陽、表裏一体だと思えば「ありがたい、ありがたい」とひと安心して感謝する「小満商売」でありたいと、薫風に吹かれながら思うのでした。
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