【「恩送り」の精神】
2020.12.15更新
大みそかの夜を「除夜」というのは、一年の最後の日ごよみを「除く」「夜」から来ているそうです。
暮れゆく年を惜しみつつ、新しい年を迎えるための行事のひとつが「除夜の鐘」です。行く年来る年をまたぐ除夜の鐘は108回つかれますが、これは「煩悩の数」という説が有名です。
煩悩とは、自分を悩ませるものや心を乱すもののこと。
仏教の根本的な考え方でいうと、人の煩悩は大きく三つあるそうです。
一つ目は「貪(とん)」。必要以上に欲しがること。
二つ目は「瞋(じん)」。自分の心に執着して思い通りにならないと怒ること。
三つ目は「痴(ち)」。無知で愚かな考え方にとらわれること。
三つ合わせて「三毒(さんどく)」と呼ばれています。
つまり私たち人間は「欲」と「怒り」と「愚かさ」で心を乱しているのです。
すでに十分持っているはずなのに「もっと、もっと」と欲しがるのが「欲」です。
欲の対象はモノに限りません。
私たちはしょっちゅう他人と自分を比べては「もっと○○だったら良かったのに」と嘆いたりします。
思い通りにならないのが世の中なのに、自分が知っている世界だけでものを考えていると、いつもイライラしながら暮らすことになります。
そうやって自分で煩悩を生み出してしまうのが人間の愚かさなのでしょう。
今年は世界中の人たちが同じ困難に直面するという前代未聞の年でした。
そんな逆境の中でも復活が早かったのは「三毒」と距離を置いている人たちや商売だったように思います。
実際にSNSでは「こんな時だからこそペイフォワードの精神で」という呼びかけをたくさん目にしました。
ペイフォワードとは、受けた恩を別の人に渡すこと。
日本の「恩送り」の精神です。自分だけが良ければいいというのは、じわじわと自分の首を絞めているのと同じことです。
お互いに助け合うほうが全てにおいて楽ですし、めぐりめぐった厚意はいずれ自分に返ってくるでしょう。
今の世の中の状況は、私たちに「利己か利他か」を問いかけているようにも思えます。
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