2013.12.15更新

65歳の誕生日に社長の座を息子に譲ったある男性のお話です。

長年、小売業を営んできた彼は、「経営者からふつうのオジサンになって最初にやったのは、養護学校の文化祭を手伝うボランティアでした」と話していました。

社長退任の時期も、ボランティア活動も60歳から決めていたそうです。養護学校の文化祭の当日、担当するクラスの生徒たちにあいさつをしました。

「名刺なしの自己紹介なんて学生時代以来だなぁ」と感慨深かったそうです。

クラスの出し物はポップコーンの販売で、彼は14歳のK君と一緒に会計係を頼まれました。ところが、「主役は子どもたち。

自分はフォローする立場」と自分に言い聞かせてK君を手伝っていたつもりが、気が付けばお金をもらって食券を渡す一連の作業をすべて彼がやっていたそうです。

小売業者としてお客様をお待たせしない商売を心掛けてきた彼は、今までの癖で「K君がもたもたしているとお客様を待たせてしまう」と思ってしまったのです。

しかし、確かにK君は言葉も手の動きもおぼつかず、食券と一緒に100円玉を渡してしまう状態だったそうですが文句を言う人は一人もいません。

お待たせしたらお客様がイライラすると気にしているのは自分だけで、目の前のお客様たちはK君が一生懸命にやっている姿をニコニコしながら待っている。

こんなときでも合理的に効率を重視してしまう自分に、冷や汗が出る思いだったと彼は振り返っていました。ふつうのオジサンになった彼は改めて考えたそうです。

文化祭では小売業のプロである自分より、K君のほうがよほどお客様との距離が近かった。長年、お客様のために頑張ってきたつもりだが、「お客様のため」とは一体何だろう。

自分は本当にお客様のほうを向いた商売をしてきたのだろうか。経営者からふつうのオジサンになってはじめてそう感じたそうです。

「経営者のときはお客様のためにと脇目も振らずに突き進んだけれど、前ばかり見ていると大切なものを見落としてしまいますね。

たまには右や左、上や下も見ないといけないですね」と彼は言っていました。

投稿者: 伯税務会計事務所

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