【信頼と信用が崩壊するとき】
2018.04.15更新
A氏がクリーニングに出したジャケットが破損して戻ってきたそうです。
あらかじめ破損の可能性を知らされていたので仕方ないと納得したものの「こんなにひどいヒビ割れは今まで見たことがない」と受け付けの店員も驚くほどの状態なのに、取りに行くまで何の連絡もなかったことにA氏は違和感を覚えたそうです。
A氏も会社を経営する立場。
トラブルの対処は初動が肝心だと常々肝に銘じています。
そこで、その店員に「こういう場合はどうされるのですか?」と聞いてみると「弁償はできませんがクリーニング代をお返しして、ご迷惑料として一律5000円をお支払いしています」とのこと。
今まで見たこともないくらいひどい状態だと言いながら「一律」とは・・・。
どんな会社なのか逆に興味がわいたA氏は「弁償は望みませんが、上の方から一度お電話いただけませんか」とお願いしてみました。
その翌日、クリーニング店からの電話に出られなかったA氏がコールバックすると、電話口の人が明るく元気にこう言ったそうです。
「あのクレーマーの方ですね!」。
店員にまったく悪気がないのは分かりました。
このクリーニング店では、店員同士が「クレーマー」という言葉を日常的に気軽に使っているのだろうと感じられたからです。
裏では「お客」、表では「お客さま」。
それと同じノリで「クレーマー」に「方」を付けて「クレーマーの方」というおかしな言葉を編み出したのだろうと想像し、A氏は怒るというより笑ってしまったそうです。
そして同時に、これが自分の会社だったらと考えて背筋がゾッとしたのです。
会社が築いてきた信頼や信用は、たった一人の、たった一言で、いとも簡単に失われてしまうことがあります。
A氏は朝礼で「日頃の自分が仕事にも表れます。
日常こそ自分を磨く場です」と話し、自分も襟を正したのでした。
ところで、経営者にとって世にも怖い話の結末は、クリーング代の返金と、茶封筒からおもむろに取り出された迷惑料1万円。
結局オーナーは登場せず、A氏は言われるままに1万円の領収書を書いたそうです。
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